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photo by Monica H.

「生涯賃金は5歳までに決まる」という考え方の根拠

ノーベル経済学賞の受賞者ジェームズ・ヘックマン教授(シカゴ大学)は、就学前の子どもに対する教育投資効果に着目し、「就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の教育にある」とする論文を、科学雑誌『Science』で発表しています。この論文の中身は以下のような内容になっています

ヘックマンが書いた論文では、「ペリー就学前計画の実験」の結果が紹介されています。ペリー就学前計画の実験とは次のような内容です。

経済的に恵まれない3 歳から4 歳のアフリカ系アメリカ人の子どもたちを対象に、午前中は学校で教育を施し、午後は先生が家庭訪問をして指導にあたるというものでした。この就学前教育は、2 年間ほど続けられました。そして就学前教育の終了後、この実験の被験者となった子どもたちと、就学前教育を受けなかった同じような経済的境遇にある子どもたちとの間では、その後の経済状況や生活の質にどのような違いが起きるのかについて、約40年間にわたって追跡調査が行われました。
出典 :http://www.blog.crn.or.jp/lab/01/55.html
その実験の結果は、有意な差となって表れたようです。
就学後の学力の伸びに、プラスに作用したことはもちろん、介入実験を受けた子どもたちと、そうでない子どもたちを40歳になった時点で比較したところ、高校卒業率や持ち家率、平均所得が高く、また婚外子を持つ比率や生活保護受給率、逮捕者率が低いという結果が紹介されています。(下図表参照)


無題

出典:James J. Heckman and Dimitriy V.Masterov. “The Productivity Argument for Investing in Young Children"
つまり、幼児教育がその後の人生を大きく左右されることが、この実験により証明されたことになります。これを受け、様々な研究がその後日本でも行われていますが、現在では脳科学の観点から見ても幼児教育への投資が一番費用対効果が高いことが分かってきているそうです。

「だったら幼児教育では何をすればいいの。」このように、多くのお父さんお母さんが頭を悩ませているのではないでしょうか。私もその一人です。

こんな論文や研究結果を見てしまうと、「じゃあ、塾に通わせなきゃ!」、「通信教育を始めなきゃ!」、「英語も早い段階からの学習が大事みたい!」と、考えてしまいます。ただ、そうした幼児教育にお金を潤沢に注ぎこめるご家庭がどれほどあるのでしょうか。そして、幼児教育であれば何もかもが大切で、塾に通わせたり、通信教育を行えばよいのでしょうか?

この答えこそ一人の親として興味が沸いてきます。果たして、答えはあるのでしょうか。実はその答えのヒントが、先に紹介したペリー就学前実験結果から読み取れます。

ペリー就学前実験から見える幼児教育で必要な2つのこと

ペリー就学前実験では、先生が子どものために家まで訪れ、勉強を教えてくれています。ここで考えてほしいのは、この勉強は特殊な(高度な)内容をやっていたかということです。想像するに、答えは「No」です。先生は、ただ子供にあった問題を一緒に考えてくれていたという程度だと思います。

つまり、「どのような教育を施すか」はさほど重要ではなく、それ以上に大人と一緒に過ごす中で、一緒に考え、そして認めてもらえるという「成功体験を積む」ことこそ重要なファクターなのです。

まとめると、幼児教育に必要なこと、それは次の2つのことです。
  • 大人と一緒に勉強に取り組む時間
  • できたことを褒めてもらう体験
これこそが、幼児教育に求められるキーワードなのではないでしょうか。

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